セーフティアセッサ資格制度 資格者インタビュー

座談会に参加いただいた皆様に、どういったきっかけで資格を取得しているのか、どのように役立てていくのか、個人にフォーカスしたインタビューを行いました。

 

取得者インタビュー

荘山 英敏 様 コニカミノルタ株式会社 品質保証統括部 安全技術部(取得資格 SSA)

荘山様

コニカミノルタで品質保証を担当している荘山です。主な業務は産業用の印刷機の品質保証で、特に製品安全を専門としています。具体的には、各国の安全規格への適合と認証取得に加えて、市場で発生した不具合の解析をもとに自社の設計に適用して、新製品の安全性を向上していくサイクルをまわすことを仕事としています。

NECASA資格制度を知ったきっかけ、あるいは受験の動機を教えてください。
荘山様

私共は経済産業省がガイドラインを発行している消費生活用製品向けのリスクアセスメントを過去より実施していたのですが、新たに大型の機械を扱うことになり機械設備向けのリスクアセスメントに取り組む必要が生じました。そこで機械安全系の規格を調べていた際に、SA資格制度が厚生労働省からも推奨されているということを知った、というのがきっかけです。

NECA資格の取得を目指すにあたり、どのように学ばれましたか?
荘山様

日本認証の講座を受講しました。資格取得も目的ですが、何よりしっかりと知識をつけて、製品の安全設計に活かせられないといけないと思っています。日本認証の講座の中にはグループディスカッションもあり、普段接する機会が少ない使用者側の方と一緒にリスクアセスメントをする機会も得られましたので、非常に勉強になりました。社内のメンバーにも受講を勧めています。

NECA資格をご自身の業務にどのように活用されていますか?また取得前と後で変わったことはありますか?
荘山様

自グループのメンバーからのリスクアセスメント報告や社内で新しいガイドの提案を受ける際に、安全関連の意思疎通が早くなりました。全員が同じ知識と共通言語を持っているので議論が非常によく進みます。製品安全向上のためのガイドが改善できたとの報告も受けています。その理由から他のメンバーにもSA制度の資格取得を勧めています。

NECA資格をご活用いただくにあたり、苦労されたことはありますか。
荘山様

資格習得を通じて学ぶ手法は基本となる手法ですので、自分たちの製品の使い方や使用者を考慮した上で応用する必要がどうしても出てきてしまいます。基本的な機械安全規格の考え方がある中で、自分たちはどこに水準を設定するのか。我々のような品証部門だけではなく、開発、営業やお客様などいろいろな目線がある中で、当社としてはどうするかを決めることが一番難しいです。他の企業様はどうされているのかも悩みながら、労働災害が起きないリスクの許容水準はどこなのか、探り続けている状況です。

NECA資格のステップアップや今後の資格の活用に関して、お考えをお聞かせください。
荘山様

自分自身もステップアップしていきたいと思っているので、SLAを取得したいと思っています。すでにSAを取得しているメンバーにも製品開発や教育などの経験を蓄積して、いずれSLAも狙ってほしいですね。組織として資格者を増やしていきたいと強く思っているので、新人はSSAから、中核メンバーは更に上位資格を目指してもらいたいです。

 

青野 竜二 様 芝浦機械株式会社 生産センター 生産企画部(取得資格 SA)

青野様

芝浦機械株式会社 生産センター生産企画部の青野と申します。私の会社は、射出成形機、ダイカストマシン押出し成形機などの産業用機械を作っている会社です。現在の私の仕事は弊社工場のスマートファクトリー化の推進です。私は、SA資格を2008年に取得しました。資格取得後は業務に活かしつつ、SBAの社内講師を務めたり、SA協議会という資格者団体にも参画し機械安全技術のスキルアップを図っています。

NECASA資格の受験動機を教えてください。
青野様

SAを取得した2008年当時、私は制御装置の設計部門に所属しており、弊社製品である機械をISO 13849-1に適合させる必要がありましたが、機械安全が全然分からず困っておりました。ちょうど社外からSA資格制度というのがあるのを知り、これはと思って資格に挑戦するに至りました。資格の勉強を通して、機械安全を設計に役立てることができるようになりました。

NECA資格取得に向けてどのような準備をされましたか?
青野様勉強は広く深い知識が必要で一夜漬けできるようなものではありませんでした。社外の機械安全講習を半年かけて履修して学習しました。
NECA規格の改訂や最新技術などの情報収集はどのようにされていますか?
青野様

設計者として規格の改定状況は把握しておく必要があります。勉強する中で、規格の成り立ちがわかってきたので、改訂があったときにどこを見ればいいのか、どのサイトを参照すればよいかテクニックを身につけることができました。製品を最新規格に適合させることが楽になったなという実感があります。

NECA日常の業務においてSAの知識を活用する際の苦労はありますか?
青野様

社内には安全規格に詳しい社員ばかりではなく、専門用語を使っての会話が非常に難しいこともあって、社内的にSBA取得を推進して底上げを図っています。社内のレベルが上がることで、規格に合った装置を自分たちで設計できることに繋がっていると考えています。最近ですと、弊社の工場にAGVを導入する際に、AGVがシャッター通過時の開閉において、安全にインターロックで制御するシステムを構築しました。このとき、リスクアセスメントから安全設計までプロジェクトが円滑に進んだのは、社内でSBAをはじめ資格取得を推進したことが一因だと思います。

NECASA資格を活用することで安全な機械を作ることに違いがありましたか?
青野様

製品設計となると規格に厳密に沿ってないと認証は通りませんから、知識や規格理解のレベル感が全然違います。例えば、制御装置のIEC 61508機能安全認証取得を担当したことがありましてそこでSAの知識が認証取得に非常に役に立ったと感じます。

NECASA資格者として、セーフティアソシエイツ(SA)協議会[注1]で活動を行っていると伺っています。内容についてお聞かせください。
青野様

SA協議会のSA部会[注2]で活動しておりまして、関東ワーキンググループの幹事をやらせていただいています。SA部会の仲間同士は同じ言葉(専門用語)で話すことができ、知識レベルが高い方々と交流して業務の悩みの相談、新しい情報を得て自分のスキルも上がり、ひいては自社にフィードバックして、製品や労働安全の質が向上させることができると考えています。

NECASA協議会に参加されていない方にメッセージをお聞かせください。
青野様 

参加して何かやらされるということはなく、機械安全の知識のアップデートもできつつ、楽しくざっくばらんに自分たちの考えをぶつけ合うような活動も可能です。自分も資格を取ってからしばらく経つので世代交代というか新しい方にもどんどん参加していただいて、更に活性化させたいと思っています。

 

池田 素子 様 東レエンジニアリング株式会社 製品安全・品質保証統括室 (取得資格 SSA,SA)

池田様

東レエンジニアリング株式会社製品安全・品質保証統括室の池田と申します。2019年にSA資格を取得しております。業務内容ですが、製品の品質、安全性に関する報告制度の運営、サプライヤーの方々と協力いただいての品質、安全性の向上の活動、製品安全性の審査という仕組みがございまして、そちらの全社事務局とそれに関係する教育推進などを担当しております。

NECASA資格を取得しようと思ったきっかけを教えてください。
池田様

入社して製品安全を統括する部署に配属されたのですが、業務の知識が足りないと思っていました。周りの方からSA資格制度を紹介いただき、それを業務に役立てている姿を見ることができて、自分も受験したいと思いました。

NECA2018年にSSAを、2019年にSAを取得されていますが、SSAからSAへのステップアップは元々希望されていましたか?
池田様

まずはSSAで頭が一杯で先のことまで考えていませんでした。SAは少し迷いましたが、周りの先輩ですとか活躍されている方からの励ましを受けて、挑戦することを決めました。
私は文系出身だったので、最初は本当に知識がゼロだったのですごく苦労しました。まずはテキストや規格をしっかり読み込んで、わからないことは先輩や上司に規格がなぜそうなっているのか裏の部分を教えてもらいました。幸い教師役の方が社内に多くいますので、暗記にならないように理解するように気を付けました。

NECA女性の資格者の方は少ないのですが、サポートいただける女性の方は周りにおられますか?
池田様社内に女性のSA資格取得者がいて、その先輩の方とお話したり、情報交換する中で励ましてもらい、私も受験したいなと思いました。
NECA文系の受験者に対して、アドバイスはありますか?
池田様

   文系でありながら製品安全の知識に踏み出すのは、結構勇気がいることです。私もゼロというかマイナスぐらいからのスタートでしたけれども、新しい扉を開くというのはすごく刺激的で楽しいことでした。今まで知らなかったことをどんどん知って、技術者の根本に触れることができたと思ってます。ですから、文系の方も躊躇せず扉を開いてほしいなって思います。そのハードルは、皆さんが感じているよりも高くないので、思い切って挑めば楽しめると思います。

NECA勉強は楽しかったですか?
池田様知らない世界だったので、すごく新鮮で刺激的で、その規格がなぜそう書かれているのか裏を知ると本当に楽しかったです。文理関係なく理解できるので、皆さんもできると思います。
NECA資格を取得された後、業務内容に具体的な変化はありましたか?
池田様 

 かなり劇的に変化しました。以前は製品安全業務の事務サポートでしか関われなかったのですが、技術者の方の確認結果を第三者的な目線で再チェックできるようになりました。SA資格取得者は、リスクコミュニケーションの前提となる知識が共通しているので、そういったやり取りが非常にスムーズです。SAの知識は業務に役立っていると実感しています。

NECASA資格制度を今後どのように社内に広げていきたいかお聞かせください
池田様当社が提供する設備の基本は安全だと思いますので、技術者の皆様にはSA資格制度の資格取得を目指していただきたいです。我々も知識や教育の面でサポートしていきたいと思っています。

 

岩谷  征 様 日本精工株式会社 生産本部 EHS推進室(取得資格 SSA,SA,SEA-C)

岩谷様

日本精工の岩谷征と申します。ベアリング製造で知られた日本精工の生産本部EHS推進室の安全推進グループにおります。NSKグループ全体の安全統括本部といった役割を務めております。私は2009年にSSAを、その翌年SAを取得し、第1回目のSEA[注3]も取得しました。

NECA SA資格制度を知ったきっかけ、あるいは受験の動機を教えてください。
岩谷様

当時のシステムコントロールフェア[注4]を見学した際にSA資格制度のパンフレットをいただきまして、非常に興味を持ちました。私は元々設計技術、電装設計でしたので、設備の安全化について取り組まなければならない立場でしたが、自分の図面、設計が安全なのか、正しいのか疑問が湧いてきました。それを勉強する、教えてくれるところを探していたところに、このSA資格制度を見つけました。当時SA資格を持っている人がいなかったのですが、上司に取らせてくれとお願いしたのが始まりです。

NECASSA→SA→SEA-Cという資格のステップアップや各資格の活用について、どのようにお考えですか?
岩谷様

第1回目のSEAを取得していますが、取得した理由は、設備側の安全機能をどれだけ向上できるのかに挑戦したいという意識がありました。私としては、ユーザー要求をどう達成するかのアプローチですので、設計者目線よりも工場で設備を安全に使う側の現場目線で見たときに、SLA取得も今後の視野に入ってきます。社内には多くのSSAがおりますが、彼らも次のリーダーとしてSAの取得にチャレンジしてほしいと思っています。

NECAキャリアを重ねていくうえでの資格取得の重要性についてどのように感じられますか?
岩谷様

    私もSEA受験において、経験年数について思うところはありました。でも、今社内のSSA教育を取り組んでいるので、SEAを取得して良かったと思います。経験を重ねると技術を教える側の立場になるので、新しい技術、広く深い知識や知見を得るために上位の資格を持つべきです。社内のSSA取得者もレベルアップ、スキルアップしているので、私も一緒にスキルアップしていかなければ教えられません。やはり学ぶこと、資格を取ることは止まることはないだろうと思っています。私もシニアに近づいているのでSEAはまさしく良いタイミングだったかなぁと。

NECA SEAは制御分野のみ展開していますが、機械分野、電気分野でのSEA需要についてお考えをお聞かせください。
岩谷様

弊社の製造設備設計部門は、私と同じくISO 13849などの規格に基づく制御技術はもちろん、機械や電気の技術も必要です。設計者のスキルを伸ばすために、やはり機械や電気のSEAは欲しいです。SAは、広い視野で『まんべんなく』設備を見ることができます。ただし、実際にものづくりの現場では、専門的なより深い知識が必要になります。機械、電気技術のエキスパートは現場として欲しいのですが、自分たちだけで育成するのは容易ではないと思います。

注1セーフティアセッサ、ロボットセーフティアセッサ、セーフティオフィサの社会的認知度、地位の向上、技術力の向上、資格者間の情報交換の円滑化等を目的として設立された団体であるセーフティアソシエイツ 協議会の略称。
注2SA協議会の中でも、SA資格制度の資格者で構成される部会をSA部会と呼ぶ。
注3SEA(セーフティシニアアセッサ)は、2020年に新たな資格区分として創設され、2021年12月に第1回試験が実施された。2023年8月現在、SEA-C(制御分野)を運営している。
注4システムコントロールフェア(SCF)は、現在はIIFESという名称で開催されている、オートメーションと計測の最先端技術総合展である。