セーフティアセッサ資格制度 資格者座談会
NECAが推進するセーフティアセッサ資格制度は、資格の創設から20年経過し、総資格者数は30,151名(2024年4月現在)となり、ものづくりに従事する多くの方々のスキルアップにご利用いただいています。今回、資格者の皆様にお集まりいただき、座談会を実施いたしました。社内ではどのように推進、活用しているのか等様々なトピックについて伺ったので、資格の取得を検討している方はぜひご覧ください。
資格者座談会
参加者
荘山 英敏 様 コニカミノルタ株式会社 品質保証統括部 安全技術部
青野 竜二 様 芝浦機械株式会社 生産センター 生産企画部
池田 素子 様 東レエンジニアリング株式会社 製品安全・品質保証統括室
岩谷 征 様 日本精工株式会社 生産本部 EHS推進室
聞き手
武田 紗織 一般社団法人日本電気制御機器工業会 制御安全委員会
※参加者の所属は2023年8月時点のものとなります
自己紹介
武田 | 本日はセーフティアセッサ座談会にお集まりいただきありがとうございます。 まずは自己紹介として、取得されているセーフティアセッサ資格の資格区分と、皆様の普段のお仕事について教えてください。 |
岩谷様 |
日本精工株式会社の岩谷と申します。本社の安全・防火・環境を統括する部門に所属しております。SAを取得したのは2010年あたりです。2021年には、第1回目のSEA[注1]を取得しました。安全統括として、全社的な安全資格取得のアナウンスをトップダウンで展開する業務をしております。 |
荘山様 |
コニカミノルタ株式会社品質保証統括部安全技術の荘山と申します。私は機器メーカーの品質保証部門に所属しており、専門は製品安全です。具体的な業務としては、当社はワールドワイドに製品販売しておりますので、各国の安全規格の適合から認証の取得、それに加えて、残念ながら規格の適合だけでは、事故は完全にはなくならないというところがありますので、不幸にして起きてしまった事故の解析をもとに自社の安全基準に適用して、新製品の安全性を向上していくサイクルをまわす組織にいます。資格は昨年から取得し始めました。現在はSSAとロボットセーフティアセッサ[注2]の2つを取得しています。 |
青野様 | 芝浦機械株式会社生産センター生産企画部の青野と申します。私はSAを2008年に取得しました。 弊社は産業用機械のメーカーで、主に工作機械や射出成形機、ダイカストマシンといった製品を作っている会社です。私の所属する生産センター生産企画部では、日本および海外の工場の統括、工場内の生産に関わる企画および計画の立案を行っています。特に私は全社のスマートファクトリー化の推進を担当業務として行っています。 |
池田様 | 東レエンジニアリング株式会社製品安全・品質保証統括室の池田と申します。2019年にSAを取得しております。 当社は大きくは工場全体のプラントエンジニアリングと、工場内の製造設備を扱うものづくりの2つの事業を行っております。私の所属している部署では、全社の横断組織として当社製品の安全性、品質に関して、各本部事業部が統一した考え方に基づいて、製品サービスに関する安全と品質の向上に取り組むように企画立案管理を行っているという立場になります。私自身は製品の品質、安全性に関する報告制度の運営、サプライヤーの方々と協力いただいての品質、安全性の向上の活動、製品安全性の審査という仕組みがございまして、そちらの全社事務局とそれに関係する教育推進などを行っております。 |
SA資格制度の組織的導入
武田 | 皆様それぞれに資格を取得し、業務でご活用いただいていると伺いました。会社・組織としてのSA資格制度の導入・活用の現状についてお聞かせいただけますでしょうか? |
青野様 |
弊社はまず人事部の教育システムの1つとして、SBA取得を推進しており、社内講師を主に私が担当しています。SBAは、社内での1日の講習で資格を取得できるということもあって、SA資格制度のエントリーとしては非常に有効と考えており、全社員取得できるように推進している状況です。もう1つとして、弊社は機械メーカーですので、設計部門は機械安全の知識を持っていなければいけないことから、機械設計者はSAを取るという方向で指導するようにしております。 |
武田 | 全社で安全教育のエントリーレベルとして学習いただくものと、機械メーカーとして設計者が学ぶべきものとで、受験いただく資格区分や活用方法を変えて推進いただいているのですね。同じく機械や設備を作られている池田様の会社ではいかがでしょうか? |
池田様 | 推進体制としましては、当社では製品安全をトップダウンで推進しておりまして、私ども品証部署が協力して活用や教育展開をしております。人事と連携し、費用負担に関してもサポートをしています。資格取得を通じて得た知見は、先ほど少し申し上げた製品安全性審査等でのリスクアセスメント、審査などで活用を進めているといった次第です。当社では、主にSSAの取得推進しております。 |
武田 | 岩谷様は、全社での安全をトップダウンで推進するお立場と伺いました。実際の推進はどのような形で進められていますか? |
岩谷様 | 弊社では、SSA取得をグループ全体で進めております。弊社は部品製造メーカーですので、あらゆる部品があります。それらの製造設備のリスクアセスメントにSSAが携わることで、設備の安全化が進んで、実際に労働災害が3か年で約半数に削減という成果も出ております。今回、向殿安全賞[注3]を受賞させていただけたのも、その成果が評価されてということです。トップダウンで全社的にSSAの取得を推進しているほか、設備設計部門はSAの取得を前提にし、社内設備の安全化を進めております。 |
武田 | 実際に労働災害が減るという成果にしっかり繋げていらっしゃるというのは、このSA資格制度を創設した我々NECAとしても大変嬉しく思います。荘山様は昨年SSAを取得されたとのことでしたが、今後の資格制度の活用はどのようにお考えですか? |
荘山様 | 皆さんの取り組みを素晴らしいなと思いながら聞いていました。私どもはここ4~5年ぐらいから、SA資格を組織として取り始めました。元々我々はプリンターメーカーでも一般消費者向けのプリンターを中心に扱っていましたので、子どもの利用まで考慮する安全設計をずっとやってきました。それが大型の設備となると、ユーザーの使い方として考慮する範囲が変わってくるため、課題認識を持っています。そのため今まさに、我々はSA資格制度を活用し始めたところです。SLAはまだいませんが、SAまでは3名ほどが取得しております。私も負けないように取得に向けて取り組んでいるところです。また、もっと若手にも広げていきたいので、組織的にも取り組んでいるところです。 |
SA資格制度の導入効果
武田 | 荘山様の会社ではSA資格制度を4~5年前から推進いただいていると伺いましたが、推進いただく中で具体的な変化や効果などはありましたでしょうか? |
荘山様 | 製品としては、先ほど岩谷様も仰っていた事故の低減効果がありました。お客様に販売をした製品で起きる問題を減らしてくことに対して、我々も確実に効果を実感しています。安全技術者としても、資格制度があることで、モチベーションが上がるかなと思っています。私が取り組んでいた消費者用生活製品は、どちらかというと規格の要求事項が細かく決まっていて、安全設計は要求事項に基づくチェックが中心でした。それに対して産業機械は、基本安全規格を使いこなしながら自分で安全性を証明していくことが必要です。SA資格制度は、その安全性を明するための自分のスキルを客観的に示すことができるものと感じおり、若手メンバーからも受けたいと手が挙がっています。皆様のように制度としての活用には至っていませんが、我々の組織の中でお客様に製品を届けるところに対しての取り組みとして活用を進めています。 |
武田 | 実際に製品設計をしていただく方の知見の向上だけではなく、モチベーションの維持のきっかけの1つとしてご活用いただけているとわかりました。 岩谷様の会社では、全社で長くSA資格制度をご活用いただく中で労働災害の低減効果があったとのことですが、その他にもなにか効果や変化などはありましたでしょうか? |
岩谷様 |
弊社ではグループ全社で資格の取得を推進しており、実際にもうすぐ1,000名に届くかというレベルでSSA取得者が増えています。取得者が増えますと、工場自らの自主的な取り組みとして、リスクアセスメントのレベルアップや、積極的な設備の安全化が進められるようになっていきます。それが大きな変化だと思いますし、SSAが増えることで、そういった機械の安全化という文化、土壌が全社に育っていると感じます。 |
武田 | 企業の中でしっかりと安全に向かう文化が形作られているのは素晴らしい成果ですね。青野様の会社ではいかがでしょうか? |
青野様 | 労働災害の低減に対して資格が有効であると感じているのは皆さんと同様ですが、弊社の場合は輸出向けの機械を作っており、その設計などにも役立てています。海外の法令や規格に適合した製品づくり、例えばCEマークの自己宣言などに取り組む際、自分たちで安全性・適合性を検証するだけではなく認証機関ともリスクコミュニケーションを取ることがあります。その際に資格取得によって得た知識を活用することで、素早く規格に適合し安全的に優れた製品を世の中に送り出すことができています。より安全な、良い機械を設計できることに非常に活用できていると感じております。 |
武田 | 認証機関とのやり取りの際の活用という観点では、池田様の会社でも同じような形でのご活用や効果はありますでしょうか? |
池田様 |
私どももお客様の製造現場でお使いいただくようなプラント、製造設備を作っておりますので、そういった認証もございます。お客様の労働安全に寄与したいという想いのもと、SSAの知見を活用させてもらっております。 |
NECA・SA資格制度への期待と要望
武田 | 会社や組織として積極的にSA資格制度を活用いただくことで様々な効果につなげていただいており、NECAとして非常にありがたく感じております。今後のSA資格制度やNECAに対して、皆様から期待やご要望、激励などのお声をいただけますでしょうか? |
荘山様 | 先ほど、皆さんからリスクコミュニケーションの大事さの話が出ておりますが、私も一昨年から、産業業界に携わってきた中ですごく大事だなと思っています。私たちが長く取り組んできた業界では、子どもも扱う製品なので、安全設計は特に厳しく、何かあったらまず止めるという思想をもっていました。一方、産業機械を見ると、プロユースで生産性も考える必要があり、人に対しての安全を確保しながらも残留リスクが残る領域がどうしてもあると感じます。この領域は我々メーカーの視点だけだと不十分なところが色々とあると思いますので、それを使い手のユーザー側にもご理解いただくことが大事で、まさにこれがリスクコミュニケーションであると感じています。こういったリスクコミュニケーションの共通言語のようなものを、SA資格制度を通じてリスクアセスメントの考え方などを広められているNECAさんに築き上げていただけると、我々メーカー視点からしても非常にありがたいなと思います。 |
青野様 | 弊社の場合、機械メーカーとして工作機械工業会、産業機械工業会といった業界団体に所属しています。また機械学会との関わりもあります。そういった外部団体との関わりの中では、まだSA資格制度はNECA独自の制度というイメージが強いと感じています。そういった他の工業会や学会との連携を深めて、もっと公に認知されるようになっていただければ、我々としても非常にありがたいと思っております。 また、弊社も2018年度に向殿安全賞を受賞させていただきました。それまで社内でのSA資格制度の認知が拡がっておりませんでしたが、向殿安全賞の記念講演として取締役が講演することになったことから認知が拡がり、最終的には社長からもSA資格制度の推進で立派な賞をいただいて良かったねと声をかけてもらいました。トップに対して非常にいいアピールになったので、とてもありがたかったと思っております。 |
池田様 | 皆さんのお話をお伺いして私も共感するところが多く感じております。やはりSA、SSAの試験は製品の安全性の信頼に非常に繋がる部分だと思います。資格者がいるということが、安全に真摯に取り組む会社というブランド価値として認識されたり、安全知識の一つの見える化の指標として世間一般にも認知されたりなど、より認知度が高まればと思っております。そうすることで、資格者に対する評価という部分でも、自分たちが取得しようというモチベーションにも繋がります。社内での評価も上がると自分たちの力にもなりますので、相互に広がっていけばいいなと思っております。 |
岩谷様 | SA資格制度の活用によって労働災害を減らすというのは、本部としての機械設備の安全化を中心にした取り組みの中で進めてきました。さらにここ数年では、ISO 45001認証を弊社の国内の全拠点で取得済みですが、その取り組みが非常にスムーズに進んでいます。それは、各拠点にSSA、すなわちリスクアセスメントのエキスパートがいたためです。これはISO 45001への取り組みを実施するにあたって、非常に大きな強みでした。ですので、やはりSA資格制度は正しいリスクアセスメントを身につける手段として、最短のルートなのかなということを実感しています。 |
武田 |
ありがとうございます。機械そのものだけではなく、労働安全衛生マネジメントシステムへの取り組みでの活用にも広げていただいているという点も含めて、我々NECAも今後皆様とともにさらに認知を広げて |
SA資格者の拡大に向けて
武田 | 最後に、今後資格取得にチャレンジする受験者の皆様に向けてメッセージをお願いします。 |
岩谷様 | 弊社ではSSAが1,000人近くいると先ほどお話したのですが、今は彼らのリーダー的な存在を育成している段階です。リーダーとなる人材にはぜひSAを取得してもらいたいという想いがあります。といいますのは、SAを取得しますと、リスクアセスメントだけではなくて安全対策に関する知見も身につきますので、安全の視野が非常に広がります。せっかくですから、SAを目指し、機械安全の全体像をぜひ身につけてもらいたいと思います。 |
荘山様 | 製品安全は何も問題がなければ普段注目をされませんが、一方で大きな問題が起きるとすごく注目をされると日々感じます。本当に不可欠な活動ですけれども、縁の下の力持ち的なポジションかなと思っています。その中で、私は先ほど言いましたとおり、消費者用製品の業界から、産業機械の業界にきたのですが、安全技術は業界を横断して幅広く使えると本当に感じます。今まさにSA取得に向けてリスクアセスメントを学ばせていただいているところですが、この知見は例えば家電業界の安全設計でも使えると思います。また機械安全規格は三層構造の規格体系なので、資格取得に向けて学んでいく中で、他の業界の機械設備でも活用できる基本技術として習得でき、さらに業界間の議論もできるなど、幅広い分野で活用ができると感じています。このように、安全技術は必須な上、応用範囲が広いと思いますので、これを対外的に証明ができる資格をもっておくと、色々な場で役に立つのではないかと、思っています。私は今まさにSAを受け始めているところですが、ぜひ皆さんも受けられるといいのではないかと強く思っています。 |
青野様 |
SA資格を取ることによって良かったことについてお話させていただくと、私の場合、社内でSBAの講師という形で自社に貢献できていることが大きいと思っています。 |
池田様 | 製品安全の基本的な知識を体系的に1から学ぶには、本当に最適な素晴らしい資格制度だなと私自身が実感しております。個人的なバックグラウンドを申し上げると、私は元々文系出身で、転職して当社に入ったので、それまで全く製造業のことも製品安全のことも知らない状態でした。製品の知識を得たいというきっかけで、資格を勉強させていただきました。入門から応用までをSSAからSAで勉強させてもらいましたが、すごく頭に入りやすくて、勉強しやすいので非常に役に立ちました。全体的に、やはり体系的なものを頭にどんどん入れるには、本当に優れた資格かなと私自身は感じております。ぜひ皆さんも文系理系問わず、製品安全の入口として、この資格を活用されることをおすすめしたいと私は感じています。 |
武田 | ありがとうございます。皆さんのご自身の体験や社内での活用の仕方を踏まえて、SA資格制度を活用することの利点を皆さんにご紹介いただきました。我々NECAとしても、SA資格制度を活用していただくことによって、世の中を安全にしていく製品が当然である世界を作っていくことに、ぜひ貢献していきたいと思います。 |